『同じ練習をしているのになぜ伸びる選手と伸びない選手がいるのか?』

スポーツの現場では、誰もが一度は疑問に思っている、私も自身の選手経験やトレーナー経験から特に陸上競技(走)において強く感じます。

同じチームで、

  • 同じメニューをこなし

  • 同じ指導者から学び

  • 同じ時間練習し

  • 同じ環境で生活している

にもかかわらず、

ある選手は大きく成長し、ある選手は伸び悩む。

もちろん、

  • 遺伝的素質

  • 筋線維構成

  • 心肺機能

  • ミトコンドリア機能

などの生理学的要因は存在する。

しかし、それだけでは説明できない現象がある。私はその差の一部を、「アウェアネス(Awareness)」という能力で説明できるのではないかと考えています。


アウェアネスとは何か

ここでいうアウェアネスとは、単なる「意識が高い」という意味ではありません。

むしろ、
・ 自分の身体を感じ取る力
・動きの変化に気づく力
・環境情報を拾う力
・微細な誤差を検出する力
・無意識に修正する力
といえます。
神経科学的に言えば、感覚・予測・修正能力の総称ともいえます。


人は動きを予測している

以下の点は重要かつ、発想の転換的テーマです。

近年の神経科学では、脳は外界を受け身で認識しているのではなく、
常に予測していると考えられています。

つまりランニング中も脳は、
・次の接地
・ 路面状況
・重心移動
・ 呼吸
・疲労状態
などを絶えず予測しています。そして、予測と現実のズレつまり予測誤差(Prediction Error)を検出しながら動きを調整しています。

伸びる選手、伸びない選手

伸びる選手は、この予測誤差の扱いが非常に上手い。
例えば、接地位置が少しズレた時、呼吸が乱れ始めた時、身体の緊張が増えた時、わずかな変化を察知する。しかも、それを意識的に考える前に修正している。

結果として、
・無駄な力みが減る
・エネルギー効率が上がる
・フォームが自然に整う
・故障が少なくなる
という好循環が起きていると思われます。

一方で、伸び悩む選手は必ずしも努力不足ではない。
むしろ真面目な選手ほど陥りやすい。
身体からの情報をうまく拾えず、予測誤差を検出できないまま、同じ動作を繰り返してしまう。

すると、
・力みが固定化する
・フォームが崩れる
・疲労が抜けない
・故障が増える

そして、「もっと頑張らなければ」とさらに練習量を増やしてしまう。
しかし本当に不足しているのは、練習量ではなく、感覚の解像度なのかもしれません。

フォームは原因ではなく結果

スポーツ指導では、しばしばフォームが重視されます。
しかし私は、フォームは原因ではなく結果だと考えています。
例えば、トップ選手のフォームを真似しても、同じように走れるわけではない。

なぜなら、フォームの背景には、
・感覚
・予測
・タイミング
・ 神経制御
が存在するからです。

高精度な感覚と予測の結果として、最適なフォームが現れる。
つまり、フォームを作るのではなく、フォームが生まれる土台を作る必要があります。

「勝手に伸びる選手」の正体

指導現場には、いわゆる「勝手に伸びる選手」が存在します。
少しアドバイスしただけで、急激に成長する。

これは単なる才能ではなく、感覚情報を学習に変換する能力が高い可能性があります。
彼らは、身体からのフィードバックを使って、自ら動きを最適化している。
言い換えれば、自己組織化能力が高い選手といえます。

日本のスポーツ指導への問い

日本の競技スポーツは長年、
・努力
・根性
・ 反復
・ 型

を重視してきた。もちろんこれらは重要ですし、昭和平成時代からの変化はある。しかしながら時折、強豪校選手から話を聞くと現場指導は思ったより変わっていない点もある。


とにかくも近年の運動学習理論では、単なる反復だけでは学習効率が高くないことも分かってきている。
重要なのは、何回やるかではなく、何を感じながらやるかです。

ところが、多くの指導現場では、
・どう感じたか
・ 何が変化したか
・身体は何を学んだか

について語られる機会が少ないです。

アウェアネスを育てるという視点

もし競技力向上の本質が、感覚・予測・修正能力にあるならば、指導の役割も変わります。教えることは、理想フォームを押し付けることではなく、選手が身体から学べる環境を作ることになります。

例えば、
・足裏感覚を高める
・呼吸を観察する
・ 重心移動を感じる

・リズム変化を味わう
・力みを認識する

こうした取り組みは、もはや単なる感覚遊びではない。神経系の学習そのものです。

競技力とは何か

・筋出力(筋トレ)も重要。
・心肺機能も重要。
・ミトコンドリアも重要。

しかし、それらを使いこなす神経システムがなければ、能力は十分に発揮されない。競技力とは、筋肉の大きさだけで決まるものではない。

私は、競技力とは

「予測精度 × 誤差修正能力」

であると考えています。

そしてその中心にあるのが、アウェアネスである。

同じ練習をしているのに伸びる選手と伸びない選手がいる・・・その差は、筋肉よりも先に、感覚と予測の質の違いにあるのかもしれません。
そう考えると伸び悩みの一つの解決口になるかもしれませんし、場合によっては「大化け」することもあるかもしれません。

また、アウェアネス的要素のことを「センス」となんとなく捉えてしまう指導者も多いのではないのでしょうか、今回の内容も一定の遺伝的要素はあるにせよ、それではセンスがない選手はどうすれば良いのでしょうか、センスがない選手ほどアドバイスを求めているというのに。

 《参考文献》
カール・フリストン『The Free Energy Principle』
アニル・セス『存在の法則(Being You)』紀伊國屋書店
リサ・フェルドマン・バレット『情動はこうしてつくられる』紀伊國屋書店
ダニエル・ウォルパート『The Computational and Neural Basis of Motor Control』
Karl Newell『Constraints on the Development of Coordination』
Guy Claxton『Intelligence in the Flesh』 John J.
Ratey『脳を鍛えるには運動しかない!』NHK出版
Francisco Varela, Evan Thompson, Eleanor Rosch『身体化された心(The Embodied Mind)』工作舎


Author:行方悟郎 Goro NAMEKATA 

 

私は中学1年生から陸上競技を始め、大学4年生の卒業まで10年間の陸上競技生活をおくりました。 当時から様々なケガをしてしまい、箱根駅伝出場を目指していた大学3年の秋には坐骨神経痛(梨状筋症候群)を発症しました。 

当時のスポーツ整形の医師からは「完治は難しいかも」と言われていましたが、どうしても復帰したいたい一心で手術を受けました。 手術その後のリハビリ、トレーニングを続け、復帰はしたのですが、結果的に最後まで痛みや違和感はなくなりませんでした。

 

同じように多くの人が ケガが治ったと思って走ったら、また痛くなった、怖くて長く走れない、走って良いのかわからない。自分のケガ(身体)には何が必要なのかわからない、走ってもすぐ疲れてしまう、思うように走れない。という状況に少なからずなっていると感じます。

 

私は「いつか上記の経験(失敗)や想いを仕事に活かしたい」と考え、はり師、きゅう師などの資格を取得しました。また様々な現場(部活動、大会帯同、接骨院、病院、フィットネスクラブなど)でこれらのことを実践してまいりました。 そして「本当に自分が伝えたい、提供したい治療やスタイル」を突き詰めた結果、現在のスタイル(リライズ鍼灸院)になりました。

 

◆鍼灸師
◆(公)日本陸上競技連盟B級トレーナー
◆ピラティスリーダーシップコンセプトマットⅠⅡ修了

◆認定心理士

◆習志野高-流通経済大学-トライデント医療看護専門学校

PB/Half1:22:48 Full2:59:37  
飛騨高山ウルトラマラソン100㎞完走8回

チャレンジ富士五湖ウルトラマラソン120㎞完走