『人はなぜ病気になるのか?』

 

― 病因と作因、そして「平衡」という視点から ―

近年、「軽い風邪症状」にもすぐに解熱鎮痛剤(例:アセトアミノフェン)を服用する傾向が広がっています。しかしこれは、免疫反応の自然な働きを抑えてしまうという点で、必ずしも合理的とは言えません。

 


病気は何によって起こるのか

病気とは、細菌やウイルスなどの外的因子がある条件下で人体に作用し、症状として現れる状態です。
たとえばインフルエンザウイルスは気管支粘膜に侵入し、炎症反応を引き起こすことで咳や違和感を生じさせます。

しかし同じ満員電車に乗っていても、感染して発症する人としない人がいます。なぜこの差が生じるのでしょうか?

その答えの一つは、ウイルスや細菌は「病気の作因(トリガー)」であって、決定的な「原因」ではないということです。彼らは常に周囲に存在しており、宿主の身体が不安定になる“タイミング”を待っているに過ぎません。

 

安保徹氏の視点 ― 自律神経と免疫の平衡

免疫学者の安保徹先生(ご逝去されています)は、自律神経のバランスが免疫機能を大きく左右すると説きました。交感神経が優位に傾きすぎればリンパ球が抑制され、感染やがんに対する防御が弱まります。逆に副交感神経が過剰になれば炎症反応が強まり、アレルギーや自己免疫疾患につながる可能性がある。

つまり、健康とは免疫と自律神経の微妙な均衡の上に成り立っており、その平衡が崩れた瞬間に「病気の作因」が活動を始めるのです。安保先生は「病気は体からの警告であり、過労やストレスを減らし、生活を見直す契機である」とも語っています。


アンドルー・ワイルの視点 ― 自然治癒力と統合医療

アメリカの医師アンドルー・ワイルは、「自然治癒力」を健康の根幹と捉えています。薬で症状を無理に抑えるのではなく、体が本来持つ治癒システムを支えることが大切だと強調しています。

その実践はシンプルです。

  • 栄養バランスの取れた食事

  • 呼吸法や瞑想などによるストレス低減

  • 適度な運動と十分な休養

  • ハーブや伝統医療を補完的に用いること

これらはすべて、体の「平衡」を整える方法であり、外部の作因に負けない土台を築く生活術です。

病因を排除するのではなく、共生する

病気の作因は、以下のように多岐にわたります。

  • ウイルス

  • 細菌・真菌・原虫

  • 発がん物質(化学物質・放射線など)

  • アレルゲン(食物・花粉など)

  • 環境・心理的ストレス

これらはすべて「原因」ではなく、「きっかけ」にすぎません。完全に排除することは不可能であり、むしろ共存の仕方を学ぶ必要があります。

安保徹氏が説いた「免疫と自律神経の調和」も、ワイルが提唱する「自然治癒力の活性化」も、方向性は同じです。つまり、外部因子と戦い続けるのではなく、身体内部の平衡を整えることが、最も現実的で持続可能な健康戦略であるということです。

 

おわりに

病気は単なる「敵」ではなく、身体からのメッセージでもあります。そこには「無理をしていないか」「生活リズムが乱れていないか」「心が疲弊していないか」という問いかけが隠されています。

だからこそ私たちは、病因を恐れるよりも、自分の内なる平衡を回復させる術を学ぶべきなのです。
また健康や運動にかかわるトレーナーやセラピストもこれらのことを本質として抑えていなければテレビやメディアと変わらない存在になってしまいます。
最後までお読みいただきありがとうございました。

 

※私は生前の安保徹先生の自律神経と免疫に関する研究会に所属していました。先生は自律神経免疫についてご自身の研究データをもとにかみ砕いて、それらが病気や生き方にどのようにプラスにしていけばよいかという指針も出されています。

安保先生のご著書は代替医療者だけでなく一般の方にもおすすめです。

参考文献
□安保徹『免疫革命』講談社インターナショナル、2001                       
□安保徹『医者が考案した「長生き呼吸法」』マキノ出版、2003
□Andrew Weil, Spontaneous Healing, Ballantine Books, 1995


Author:行方悟郎 Goro NAMEKATA 

 

当院には、自律神経の乱れ、抑うつ、パニック、不安、不眠、慢性的な疲労感、頭痛、首の痛みなど――
心と身体のバランスを崩し、仕事や学校を休みがちになったり、何とか日常を続けながらも、長いあいだ不調を抱えている方が多く来院されています。

 では、その「不調の原因」とは何でしょうか?ストレスでしょうか?仕事、家庭、人間関係…あるいは姿勢や生活習慣、慢性的な疲労や過緊張…? ――答えは一つのようで、一つではありません。
ご自身で「わかっている」と感じるときもあれば、「何が原因かわからないけれど、ただしんどい」ということも自然なことです。

 

当院では、鍼灸・整体施術、心理カウンセリング、ピラティスなどを通して、身体との対話、心との対話、そして人との対話を大切にしながら、少しずつ「本来の自分」に立ち返るお手伝いをしています。

 

私たちが信じていること――それは、身体は本来“治りたがっている”存在であるということ。

 自然のリズムと心身の声に耳を傾け、あなた自身の内に眠る“治る力”を、ここで一緒に呼び覚ましていきましょう。 


鍼灸師・認定心理士・ピラティスインストラクターとして、身体・心・自然の調和を探求し続けています。2013年より当地にて鍼灸院を開業。自律神経の不調やアスリートの身体ケアに携わる中で、対話と身体感覚の重要性を実感し、心理学やピラティスも統合。
現在はポリヴェーガル理論を軸にした施術と、「動く瞑想」としてのワンネスピラティスを実践中。すべての人が“自らの治癒力”に気づき、自分自身とつながる場を提供しています。


■資格等

□鍼灸師

□認定心理士

□介護予防運動指導員

□ピラティスリーダーシップコンセプトマットⅠⅡ修了

□(公)日本陸上競技連盟B級トレーナー

□医薬品登録販売者(未登録)