『人はなぜ治る?治癒とは?』

「ランニング中に転倒し、肋骨を骨折し、膝に擦り傷ができた」こうしたケガも、程度によりますが、通常は「放っておいても」自然に回復していきます。

誰が治したのでしょうか?

 医師でも薬でもなく、自分自身のからだが治したのです。

それを一般に「自然治癒力」と呼びます。

しかし、この言葉には医学的に明確な定義があるわけではありません。


治癒力の三つの側面

「自然治癒力」をその機能的側面から分解すると、おおまかに以下の三系統に分けることができます。

 〇恒常性維持機能:体温や血糖など、内的環境を一定に保つ機構

 〇自己防衛機能:異物(細菌・ウイルスなど)から身体を守る免疫系

 〇自己再生機能:損傷した組織や細胞を修復・再生する働き

これらの機能はそれぞれ密接に連関しており、一部が損なわれれば他の機能にも連鎖的に影響が及びます。たとえば、糖尿病では以下のような悪循環が見られます。

 【糖尿病による足部壊死の例】
1.→ 血流障害(微小循環の破綻)                               
2.→ 防衛機能低下(免疫応答の低下)
3.→ 損傷組織の修復不能(再生機能の低下)
4.→ 恒常性の破綻
5.→ 壊死に至る

免疫系から見た治癒の本質


たとえば、急性の細菌性肺炎にかかったとします。
抗生物質の点滴を受け、数日で回復し、退院する。
多くの人は「治療のおかげで治った」と感じるでしょう。

しかし、厳密にいえば抗生物質は「治す」のではなく、「治すための条件を整える」ものです。
抗生物質の本来の役割は、「免疫系がその本来の力を発揮できるよう、細菌の数を減らすこと」 です。
もし抗生物質がなければ、免疫系は敵の数に圧倒され、持ちこたえることができなかったかもしれません。 ですが、実際に病原体と戦い、組織を修復し、治癒へ導いたのは、身体内部の治癒系=免疫系そのものです。

「治す」のは誰か?

医療や治療者は、治癒反応の促進剤(触媒)ではあっても、からだに本来備わっていないものを与えることはできません。

Andrew Weil医師は著書で、こう述べています。

「治癒は外からやってくるものではなく、内から生じる。 それは、失われた平衡を回復しようとする身体本来の営みである。 医薬や治療者は、治癒の妨げを取り除き、その過程を助けることはできる。 だが、最初から備わっていないものを身体に与えることはできない。」

もちろん、ここで言いたいのは「医学を否定して自然治癒を信じればいい」ということではありません。 むしろ逆に、適切な医学的介入がなければ命を落とすことすらある。それもまた現実です。

大切なのは「盲目的になっていないか?」という視点です。

 治療方針や健康管理において、主導権を持っているのは誰か?

    自分なのか

    医師なのか

    家族なのか

    社会なのか

主導権が自分自身にあるとき、身体が一時的に弱っていても、心は自立しています。
反対に主導権を外に委ねてしまえば、心も身体も病気の支配下に置かれることになります。

「自分自身の専門家」になる

近年、メディアやSNSの影響により、「専門家」や「プロ」という肩書きが氾濫しています。
 しかし、それらに振り回されるのではなく、自分自身の心と身体の専門家になることが、何よりも重要です。

そのためには、一つの視点に偏ることなく、複数の情報源から学び、 最後は自分の内なる感覚や理解を信じて判断する。その意味では「感性や情緒」というのは非常に大切なものといえます。


治癒とは、単なる回復ではなく、「いまここ」における自分自身との再接続のプロセスでもあるのかもしれません。最後までお読みいただきありがとうございました。

 参考文献
人はなぜ治るのか 現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム アンドルー・ワイル/著 上野圭一/訳 日本教文社.1993


Author:行方悟郎 Goro NAMEKATA 

 

当院には、自律神経の乱れ、抑うつ、パニック、不安、不眠、慢性的な疲労感、頭痛、首の痛みなど――
心と身体のバランスを崩し、仕事や学校を休みがちになったり、何とか日常を続けながらも、長いあいだ不調を抱えている方が多く来院されています。

 では、その「不調の原因」とは何でしょうか?ストレスでしょうか?仕事、家庭、人間関係…あるいは姿勢や生活習慣、慢性的な疲労や過緊張…? ――答えは一つのようで、一つではありません。
ご自身で「わかっている」と感じるときもあれば、「何が原因かわからないけれど、ただしんどい」ということも自然なことです。

 

当院では、鍼灸・整体施術、心理カウンセリング、ピラティスなどを通して、身体との対話、心との対話、そして人との対話を大切にしながら、少しずつ「本来の自分」に立ち返るお手伝いをしています。

 

私たちが信じていること――それは、身体は本来“治りたがっている”存在であるということ。

 自然のリズムと心身の声に耳を傾け、あなた自身の内に眠る“治る力”を、ここで一緒に呼び覚ましていきましょう。 


鍼灸師・認定心理士・ピラティスインストラクターとして、身体・心・自然の調和を探求し続けています。2013年より当地にて鍼灸院を開業。自律神経の不調やアスリートの身体ケアに携わる中で、対話と身体感覚の重要性を実感し、心理学やピラティスも統合。
現在はポリヴェーガル理論を軸にした施術と、「動く瞑想」としてのワンネスピラティスを実践中。すべての人が“自らの治癒力”に気づき、自分自身とつながる場を提供しています。


■資格等

□鍼灸師

□認定心理士

□介護予防運動指導員

□ピラティスリーダーシップコンセプトマットⅠⅡ修了

□(公)日本陸上競技連盟B級トレーナー

□医薬品登録販売者(未登録)