『治療方針・血・血流を整える』

当院には、アキレス腱痛、大腿部・下腿部の肉離れ、膝痛、腰痛、肩の痛みなどの運動器疾患に加え、頭痛、うつ症状、慢性的な倦怠感、耳鳴り、不眠といった自律神経失調や不定愁訴を訴える方々が多く来院されます。

 

今日、医療・施術にはさまざまなテクニックや方法がありますが、私が一貫して重視している原則は、「血流の改善」と「過剰な筋緊張の緩和」の2点です。薬剤を使用しない立場にある私たちのような臨床家にとって、突き詰めればこの2つが、治癒を導く実践的かつ確かな手段です。

 

当院では、鍼灸、手技療法、ホットパック、超音波治療、高電圧治療、そしてピラティスなどを、個々の状態や訴えに応じて組み合わせ、血流と筋緊張のバランスを整えていきます。

 

 


血液こそが治癒エネルギーの根幹である

血液、すなわち血流の重要性は、言うまでもありません。

 

たとえば、頭部にできた一見ひどく見える裂傷であっても、清潔に洗浄し、傷口を閉じておくだけで、消毒すら用いずに驚くほど早く、自然に治癒してしまうことがあります。その理由は、頭皮が人体の中でも特に血流の豊富な部位であるからです。血液は、損傷部位に栄養と酸素を運び、老廃物を除去する、まさに「治癒の担い手」といえるのです。

 

その対極にあるのが、糖尿病の重症患者の下肢です。糖尿病では、細い血管(細小動脈)が徐々に閉塞していき、必要な血流が末端に届かなくなります。とくに足はこの影響を受けやすく、ほんのわずかな傷でさえも、感染しやすくなり、潰瘍や壊死へと進行してしまう危険があります。血液が届かない――それは治癒の基盤が失われるということです。

 

このような臨床事例は、「血液=治癒エネルギーの物質的媒体」であるという事実を如実に示しています。これは決してスピリチュアルな観点ではなく、生理学的に観察されうる、れっきとした医学的事実です。

 

では、どのようにして血流を促進するのか?

  1. 局所的に血流を上げる

  2. 全身の循環を高めることで局所にも波及させる

この2つのアプローチを状況に応じて使い分けます。

 

ただし、血流をいくら改善しても、その血液自体が「治す力」を持っていなければ本質的な回復にはつながりません。具体的には、

  • 血液が酸素や栄養素を十分に含んでいるか?

  • 炎症物質や糖化産物などが過剰でないか?

  • 血液成分のバランスは整っているか?

これらは、施術のみで完全に補えるものではありません。日々の食習慣や睡眠、生活環境といった、いわば「身体がつくる血液の質」にも深く関係しています。先ほど述べた糖尿病の例からも、この事実がよくわかるかと思います。

 

現代社会と冷えの問題

また、近年では「冷え」も多くの体調不良の原因となっています。特に夏場の冷房による体温調整機能の低下、末端冷え、内臓の冷えなどが、血流の停滞や筋緊張を引き起こし、自律神経の乱れにもつながります。都市化が進んだ現代社会においては、もはやこれは避けられない生活環境の課題ともいえるでしょう。

おわりに

アンドルー・ワイル博士の『人はなぜ治るのか』にも示されているように、人間には本来的に自己治癒力(healing response)が備わっており、医療者の役割とは、それを邪魔せず、むしろ整えていくことです。

その視点から、当院では血液(血流)を「身体が治ろうとする力を運ぶ媒体」としてとらえ、自然な形でその流れを取り戻すサポートを続けています

 


参考文献
□アンドルー・ワイル『人はなぜ治るのか 改訂版 現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム』日本教文社, 2011年           
□矢野忠『統合医療でがんに克つ』NHK出版, 2014年
□矢作直樹『人体はこうして治る』講談社, 2012年
□福田稔『自律神経免疫療法のすべて』現代書林, 2010年


Author:行方悟郎 Goro NAMEKATA 

 

当院には、自律神経の乱れ、抑うつ、パニック、不安、不眠、慢性的な疲労感、頭痛、首の痛みなど――
心と身体のバランスを崩し、仕事や学校を休みがちになったり、何とか日常を続けながらも、長いあいだ不調を抱えている方が多く来院されています。

 では、その「不調の原因」とは何でしょうか?ストレスでしょうか?仕事、家庭、人間関係…あるいは姿勢や生活習慣、慢性的な疲労や過緊張…? ――答えは一つのようで、一つではありません。
ご自身で「わかっている」と感じるときもあれば、「何が原因かわからないけれど、ただしんどい」ということも自然なことです。

 

当院では、鍼灸・整体施術、心理カウンセリング、ピラティスなどを通して、身体との対話、心との対話、そして人との対話を大切にしながら、少しずつ「本来の自分」に立ち返るお手伝いをしています。

 

私たちが信じていること――それは、身体は本来“治りたがっている”存在であるということ。

 自然のリズムと心身の声に耳を傾け、あなた自身の内に眠る“治る力”を、ここで一緒に呼び覚ましていきましょう。 


鍼灸師・認定心理士・ピラティスインストラクターとして、身体・心・自然の調和を探求し続けています。2013年より当地にて鍼灸院を開業。自律神経の不調やアスリートの身体ケアに携わる中で、対話と身体感覚の重要性を実感し、心理学やピラティスも統合。
現在はポリヴェーガル理論を軸にした施術と、「動く瞑想」としてのワンネスピラティスを実践中。すべての人が“自らの治癒力”に気づき、自分自身とつながる場を提供しています。


■資格等

□鍼灸師

□認定心理士

□介護予防運動指導員

□ピラティスリーダーシップコンセプトマットⅠⅡ修了

□(公)日本陸上競技連盟B級トレーナー

□医薬品登録販売者(未登録)